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大自在

7月5日(日)

2009/07/05
 昭和を描く漫画「三丁目の夕日」が映画化されてヒット、納棺師の仕事が話題を呼んだ「おくりびと」の舞台も昭和が色濃く映し出されて訪れる人が絶えない。昭和30年代の街並みをそっくりそのままに活用した町ぐるみ博物館の取り組みも見られる。不況風がかえってブームを強めたのか、昭和を懐かしむ声が一段と高まっている

▼清水で育った作家村松友★さんの新作「清水みなとの名物は」(白水社)も昭和の声を伝えるノンフィクションだ。少年期の思い出の片隅に生き続ける、戦後の清水で旗揚げした軽演劇の足跡を追い求めた<贅沢な散歩>の体裁である

▼昭和22年~25年半ば、終戦の解放感に満ちて景気に沸く清水みなとの名物にもなった「劇団ポートシミズ」に集まり散じた貧しくても明るい青春群像をひもとくうち、大戦前後の演劇界を代表する新宿ムーランルージュとの<不思議な重なり合い>も発見している

▼劇団には後に国民的歌手となる美空ひばりが12歳、ベビー笠置の名でゲスト出演し、公開バラエティー番組「お笑い3人組」やCMソングで人気を集めテレビ興隆の大役を担った楠トシエさんも専属歌手として名を刻んでいる

▼終戦直後の時代と欲求、富士山やミカン、茶、海の幸に恵まれた駿河の人々の特質もあぶりだして、<自分は清水みなと製の人間であることを、あらためてかみしめられた>とも記している

▼各地の風景を伝えながら映画「男はつらいよ」が30年で48作と超人気シリーズになったのも、昭和という温かな詩情がもたらしたものだ。劇団ポートシミズを記憶にとどめる市民も少なくなったが、村松さんの作品からは時代を豊かに包む合唱が聞こえてくる。
※★は示ヘンに見

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