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大自在

10月12日(日)

2008/10/12
 青空の下で黒味を増してゆく山々と打って変わって、秋の野辺は同じ冬支度でも彩りを変えて移ろってゆく。モクセイの甘い香りに包まれながら花々を求めて歩き回るにも絶好の時季である

▼小栗結一著「掃苔しましょう」(集英社新書)は興趣に富む散策記だ。「掃苔」は「そうたい」と読んで、墓石の苔を掃くこと。転じて墓参りを指し、江戸期には先賢の墓を訪ねて拓本に取ったり、事跡に思いをはせる典雅な趣味ともなっている

▼本書も谷中や染井、雑司ケ谷、護国寺、青山など東京都内の大霊園に眠る賢人・才人・奇人480人の遺徳をしのびながらの歴史探訪の体裁だが、もう40年も前のこと、学園紛争真っただ中で授業もなく、毎日を時間つぶしに独り、雑司ケ谷や護国寺の墓めぐりをしたことが思い出された

▼もちろん掃苔の言葉などは知るはずもなく、小さな自然石に竹久夢二と刻んだ墓、これも小さな盗賊鬼あざみ墓、がっしりと身構えた夏目漱石墓、自然石ながらも大きな島村抱月墓…中でも大隈重信だったか、台座の上に見上げるほどに巨大な板碑が載った墓にはびっくりした

▼いずれも本人の意思とは別物だろうが、墓石にもそれぞれの生き様が現れるんだなと感じたものだ。今は葬送も大きく様変わり、宇宙で散骨をという企画まである。日本海に浮かぶ隠岐諸島の小さな無人島カズラは、島内すべてが散骨所になった

▼葬儀社などが出資して8月開所、既に生前予約が20件余も。墓を建てず1年間、夫の遺骨を自宅で守っていた女性が近く初の散骨者となる。国立公園内のために春秋1週間の散骨時以外は立ち入り禁止だが、年忌には島を望む慰霊所から拝めるという。

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