政治と切り離すことができないカネの問題。読者の皆さまからご意見を募ったところ、かつて選挙で買収行為に手を貸したという衝撃的な告白が届きました。
20年ほど昔のことです。ある選挙の立候補者より、5000万円を1000円札に両替してほしいと依頼されました。2人だけの隠密裏の行動でした
選挙の際、有権者のもとに数千円ずつ現金が配られたことをうかがわせる内容。すでに時効とはいえ、公選法に抵触する行為は断じて許されません。しかし、「政治とカネ」の議論を進めるには、この手紙を避けることはできません。
「親にも女房にも、誰にも言えず、ずっと苦しかった…」。男性は真っすぐにこちらを見ながら語り始めました。浜松市中区の会社員(71)です。
銀行マンだった当時。その候補者とは地元の政界関係者から紹介され、旧知の仲でした。「ちょっと飯でも食おう」。電話でいつもの料理屋に呼びだされ、裏口から店を出た直後、帯封の付いた5000万円入りの紙袋が手渡されたそうです。
職場には「家庭の事情」と話して2日間の休暇をもらい、浜松から離れた県内の他市や愛知県で少しずつ両替したといいます。「数日後、選挙事務所に行ったら、支持者が急に増えていたんです。それで『実弾』を投下したと直感しましたね」。実弾とは、選挙の世界で現金買収を意味する隠語です。会社員はそのとき、“センセイ”を手助けしたという妙な高揚感があったといいます。
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その候補者はクリーンな人柄でした。政治は金が掛かります。私は体験で知りました
「いや、私だってね、それでいいとは思ってない。でも、清廉な政治家ですら、時には悪に手を染めざるを得ない。政治家って、本当は弱い立場にあるんですね」。会社員は政治の“現実”を淡々と語りました。
会社員があの体験を通して見たもの。それは、政治家の利権に群がり、選挙のときには配られる現金の多さで一票を投じる候補者を決め、自分のために動いてくれない政治家は「頼りにならない」と簡単に切り捨てる―。そんな有権者の姿だったといいます。
「政治家は当選しなければ理想を実現できない。有権者はそこに巧みにつけ込む。なのに、カネの問題が起きると、有権者は政治家を非難する。こりゃ、おかしいですよ」。会社員は鋭く指摘します。
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有権者の責任―。何とも耳の痛い話です。同様の手紙は、戦時中を生き抜いた富士市森島の男性(84)からもいただきました。
金の集まるところには、コバンザメが容易に付く。地元のために行動している
有権者の要求、そして地元優先を願う業者の要求。それに付随する官僚がおぜん立てし、官僚主義がまかり通る
もちろん、有権者のすべてが政治家に利権を求めているのではありません。しかし、利権を求めない代わりに、政治に対する関心も問題意識もない。両極端な有権者のあり方も、「政治とカネ」の問題を解決できない一因ではないでしょうか。男性は、松岡利勝前農相の自殺を引き合いに出しながら、厳しい一言で締めくくっています。
官僚の天下りが続き、また不祥事が起きるだろう。このような事件は、政治に関心のない有権者にも、責任の一端があることを忘れてはならない
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