「生徒とご両親の心を傷つけ、地域のみなさんが学校に寄せた信頼、教育への期待を裏切り、申しわけありませんでした。私にできることは何でもやるつもりでいます」。4月19日夜、静岡市内の中学で開かれた保護者らへの説明会でこう語った男性教諭は20日後、自ら教職の舞台から去った。
英語で「厄介者」を意味する「黒い羊」。教諭は3月中旬、1年時に担任した別室登校状態の3年女子生徒の卒業アルバムにこの言葉を含む英語のことわざを寄せ書きし、市教委から文書訓告処分を受けた。生徒の母親は「1年で別室登校になった時、一切連絡をもらわなかった。通知表に一言も書いてくれなかった。3年間の集大成があの一言になった」と受け止める。
校長は教諭がいろいろな場面で、乱暴な言葉を使って生徒に注意しているのを承知していた。校長がこの中学に赴任した平成16年度も、それ以前にも保護者から学校に教諭への苦情が寄せられていた。
「日ごろから職員を監督指導する立場にある校長が、指導を徹底しておけば防ぐことができたと深く悔やんでいる」。説明会で、校長は反省を口にした。地域住民の1人は「苦情が来たのに、何ら対処をしてこなかったのか」と憤りの声を上げた。
9年前、この教諭が顧問を務める運動部の生徒の父母らは「暴言が頻繁にある。校長に訴えても『指導をします』との返事ばかりで進展がみられない」として、顧問を外したり教員をやめさせるよう求める文書を市教委に提出していた。
市教委教職員課は「この教諭が子どもに寄り添った指導ができていないということは、管理主事の学校訪問などを通じて以前から把握していた。具体的内容は聞いていないが、校長は本人に指導していきたいと話していた」とした上で、「今回の出来事は、把握していた内容の延長線上にある」と認める。
女子生徒の心を傷つけたのは、直接的には教諭の行動。しかし、校長や市教委の教諭への対応に関する小さな“逃げ”や妥協の積み重ねが、今回の事態を招いた一因とみる教育関係者や保護者は多い。
元同僚は「今まで彼に対して周囲が何もしてこなかったわけではない。しかし、彼が自分の言動が子どもをどれほど傷つけているかということに気付くまで、本気でぶつかってきたとは言えない」と指摘した。
教諭からの退職願を受理したことについて、市教委は「本人の判断を尊重した」と説明する。退職した教諭1人の問題として片付けない、教育界の自浄作用が問われている。(教育取材班)