定時制の1クラスの生徒数は全日制より大幅に少ない。県立浜松工業高校定時制の北条静(きよし)教諭(50)が受け持つ選択科目の中には生徒9人という授業もある。生徒が演習問題を解いている間、北条教諭は1人1人の机を回りながら、前日欠席した男子生徒に「昨日は姿が見えなかったね。仕事かい」と声を掛けた。
定時制の生徒の年齢、職業、家庭環境などはさまざま。勉強体制が整う条件も個々に違うが、生徒のプライバシーにむやみに立ち入るのは禁物。さりげない声掛けの中にも、北条教諭の気遣いがのぞく。
北条教諭は県教委が平成16年度末の人事異動から導入した「希望表明制度」で4月に着任した。これまで県西部の工業高校3校で教えてきたが、定時制は初めて。「教員生活も残り10年となったので、いろいろな校種を経験したい」と希望を出した。
北条教諭は「定時制の生徒指導のきめ細かさは想像以上だった」と打ち明ける。休みがちの生徒の家庭に頻繁に電話するクラス担任の姿に感銘を受ける一方、そこまで丁寧な指導をしてもいろいろな事情で退学する生徒がいることに、定時制の難しさを実感した。北条教諭は本年度、新たにできたバレー部の顧問になったが、生徒たちもアルバイトなどで忙しく、週2回の練習に3人ぐらいしか集まらないこともある。
現在、バレー部とともに力を入れたいと考えているのは“個に応じた授業”。少人数という利点を生かし、個々の生徒の学力や課題に合わせて、プリントなどを自作するつもりだ。「一斉授業が主体の全日制より、いろんな授業ができそう。やりがいも大きい」。北条教諭の言葉に力がこもった。
藤枝市立青島小で養護学級を担任する女性教諭(45)も希望表明制度で異動した1人。養護学級や養護学校で15年にわたって障害児教育に携わり、「養護学級で教え続けたい」と同小に異動を希望した。
同小では養護学級と普通学級の児童の交流が盛ん。女性教諭は「学校全体に温かいムードを感じる。養護学級の子供たちが頑張っている様子を今まで以上に学校全体に発信したい」と意気込んでいる。
「希望表明制度」は各学校が示すビジョンに意欲を持って応える教職員の希望を募り、適材適所に配置することで、現場の活性化や学校の特色化を狙う。平成16年度末は、小・中学校、高校、養護学校、事務局合わせて異動希望者2809人のうち、38・9%に当たる1093人の希望が反映された。(教育取材班)