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教訓 中越/スマトラ沖

(6)地域の話掘り起こせ

2005/02/28
 震源地から1600キロも離れているスリランカの海岸に津波は突如襲って来た。トリンコマリの住民に聞くと、初めは1メートル程度海面が上がって、それから1~2キロメートルも引いていったという。海底の地形が明らかになり、魚が跳ねていたという。そして高さ数メートルの津波が押し寄せてきた。海岸沿いを走る道路の高さは1~2メートル程度で、少し内陸部の建物の浸水痕は地上1・7メートル程度であるから、津波はトリンコマリでは3~4メートル程度と考えられる。聞き取りをした範囲では、津波の原因である地震を感じたという住民は誰もいなかった。津波というものを前に聞いたことがあるかと尋ねても、「何も聞いたことがない」という。今ではスリランカでも津波を「つなみ」と発音する。「つなみ」は日本語だそうだが、「日本は津波も輸出するのか」と皮肉を言われた。
 被災者はいつ来るかわからない津波が再び来るのではないかと恐れており、海岸部の家を直すより、海岸から離れている所に新たな住まいを欲しいという人が多くいた。しかし、仮に内陸に住み、そこから通って漁業を行うことは1時的には可能でも、津波の恐れが忘れ去られれば元に戻る。津波はそうそう頻繁には来ないであろうから、住民は津波の経験を時間の経過とともに忘れてくる。そのような時、いかにして津波の経験を語り伝えるかが、大きな被害を再び起こさないための重要なポイントとなるであろう。これを災害文化といっている。
 1月18日から神戸で開催された国際防災会議ではインド洋における早期津波警報システムの設置について国際的な協力が行われることが合意された。もちろん津波警報がインド洋沿岸諸国に伝えられることは重要であるが、警報を聞いた住民がそれをきちんと理解し、どう対応するかによって被害は著しく違ってくる。現在のところ、津波の記憶は新しい。しかし、時間がたつにつれて人々の記憶から遠のくものである。阪神・淡路大震災は誰の記憶からも消えないと思っても、地震後に生まれた子供は既に10歳である。
 日本ができる防災協力は先進的な技術を輸出することだけではない。どのように災害文化を伝承するか、我々の持つ経験とノウハウを伝えることができるのではないか。「稲むらの火」があるからといっても、ラフカディオ・ハーンが掘り起こしてくれたものである。「稲むらの火」をそのまま持っていても人々に訴えるものとなるとは限らない。それぞれの地域にある同じような経験を掘り起こし、伝えていくお手伝いをすることも重要なことであろう。
 (小川雄二郎・富士常葉大環境防災学部教授)

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▼安政の南海地震の津波の恐ろしさや教訓を伝える人形劇
「稲むらの火」の公演=静岡市内



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