最大被災地アチェ
インド洋沿岸諸国で22万人以上の死者・行方不明者を出したスマトラ沖地震の巨大津波から26日で6カ月。多数の犠牲者が出たインドネシア、タイ、スリランカから、今も被災者らの暮らしに影を落とす「TSUNAMI」の痕跡を報告する。
最大被災地のインドネシア・アチェ州。死者・行方不明者が16万人を超え、現在も約50万人が仮設住宅やテントで避難生活を送る。津波で沿岸の漁村は、家とともに船や網などの漁具を根こそぎ奪われ、生活基盤が壊滅状態となった。だが、残った住民は徐々に漁を再開、生計を立てるため苦闘を続けている。
州都バンダアチェ郊外のムナサクデ村は、名産のしらす干し用の小魚を捕る漁民の村だ。夕方、渡し船で一斉に浜を出て、沖に固定した漁船で徹夜で漁をする。津波で約700人が死亡。残った約2000人の多くは、近くの山沿いにある仮設住宅で暮らす。
「4月まで漁をする気にならず、途方に暮れていた」。5―6人ずつの組の1つを率いるカシユディンさん(32)。約80隻あった沖の固定漁船は半数以上が流され、同数あった渡し船はほとんどが消えた。借金をして古い漁船を購入。水漏れの船体を修理し、渡し船にした。「渡し船の数は以前の半分以下。皆で交代で使っている」
津波で6歳と3歳の子供を失ったネルサン・サリアディさん(29)は心の傷が癒やせず、8年続けた漁をやめた。「朝帰って家で休んでいて津波にのみ込まれた。2人の子供を抱き締めたが、最後まで守ってやれなかった。2度と海には出ない」とうつむく。
政府の復興基本計画によると、アチェ州では津波で1万隻の漁船が失われ、13万人の漁民が職を奪われたと推定されている。最近は、零細漁業の村々にも国内外の支援が届き始め、漁業復興へ向けた小型漁船の建造や、漁具の製作が進む。
今後、問題になりそうなのは津波が破壊した漁村をどこに再建するかだ。政府の復興計画では将来の津波に備え、海岸の直近の村は内陸に移して再建する方針だが「海に近い村に戻りたい」という声が根強い。仮設住宅も沿岸部を避け、内陸部につくられているが、漁の再開で既に海辺に戻った人も多い。
漁村が多い北アチェ県のタルミジ・カリム知事は「漁民らは半数が元の場所に戻れないだろうが、新しい村の生活基盤を十分整備すれば納得してくれるはず」と話す。(バンダアチェ共同)