福岡県西方沖地震で7割以上の家屋が全半壊した玄界島(福岡市西区)。死者こそ出なかったものの、全島民が島外避難を余儀なくされた。無残な島の姿は、激しい揺れを象徴する被害として国民の目に焼き付いた。東海地震に備える静岡県は、玄界島から何を学ぶことができるのか。玄界島の被害を検証した。
博多港から北西約18キロ。玄界灘に浮かぶ周囲4・4キロの小島は、島全体を山が覆うような地形で、南東部の斜面に人家が集中していた。
「斜面災害」ともいえる被害の特徴は、宅地そのものの崩壊。島の多くの宅地が、斜面に土を盛って平地にする「盛土(もりど)」によって造られていた。専門家は、盛土を支える擁壁がもろかったために宅地が崩れ、住宅部分の被害を大きくしたと指摘する。
島には、江戸時代には既に民家が立ち並んでいた。開発業者による大規模な宅地造成が行われていたわけではなく、地震対策をしていた住宅もほとんどなかった。平らな石を積み上げ、コンクリートで固めただけの簡易な擁壁も目立った。一部の地区は、県の「急傾斜地崩落危険区域」に指定されていたが、昭和60年に一部の擁壁を補強しただけで、大半は手付かずのまま。減災につなげることはできなかった。
地震直後に現地入りした小村隆史富士常葉大講師は「斜面に住宅が密集し、とても防災を考えられない状態。リスクを覚悟したのか、それとも地震がこないと思っていたのか」と首をひねる。
斜面に住宅が密集する特殊事情は、地震後の復興も難しくしている。集落の生活道路はどこも道幅が狭く、復旧工事に必要な大型重機が容易に入り込めない。最大の問題が宅地復旧の費用。国は「住宅も宅地も個人財産」という従来の見解を崩していない。住宅地の擁壁や石垣などの修復は「100%自己負担」が原則だ。宅地の修復には数1000万円かかるともいわれ、住宅再建以上の負担となる可能性がある。
過去の地震でも、斜面災害の復興は課題を残している。傾斜地に市街地が広がる呉市で300戸以上の家屋が全半壊した2001年の広島県・芸予地震。ここでも宅地そのものが被災したことで復興は難航した。最終的には、土地を市に寄付することで建物の解体・撤去費用に上限200万円の補助を受けるという国の特例措置を選択した。建物撤去の負担は減ったが、200人以上の住民が住み慣れた土地を手放すことになった。
95年の阪神・淡路大震災、昨年の新潟県中越地震では、周辺への2次被害の恐れがある場合に限り、私有地でも宅地復旧に国、県から補助が出た。しかし、対象の選別をめぐり、住民に不公平感を残す結果になった。
玄界島では現在、島民でつくる「復興対策委員会」が復興に向けた道筋を探っている。今月21日に開いた初の島民総会で、急傾斜地の家屋を撤去し、地震に耐えられる土地に再整備するよう市に求めていくことを決めた。ただ、どこまで公費が支出されるかは未知数で、最終決定までにはまだまだ時間がかかりそうだ。
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斜面災害は、一部の地域に起きる特別なものではない。東海地震の発生が予想される静岡県にとっても重要な課題だ。次回から2回にわたり、静岡県の安全対策の現状を報告する。