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企業減災 リスクに強い社会へ

(1)事業継続計画 停滞させない強さ構築

2005/07/28

 20XX年X月―。課長田中健一は緊急参集チームの一員として、浜松市の本社会議室の円卓に向かっていた。田中の職場はITの保守管理、ソフトウエア販売などを扱う中堅企業。普段は販売を統括する立場だが、今日は違う。保守契約を結んでいる顧客企業の被災状況把握、保守要員派遣のリーダーだ。
 揺れは2時間前、午前4時に突然襲った。「これが東海地震か」。自宅の社員寮こそ無事だったが、ラジオからは次々と被災状況が報じられている。携帯電話のメールで緊急招集の指示が届くのを待たず、田中は10分後に寮を飛び出した。妻と3人の子は、寮を拠点に社員家族の保護と地域復旧にあたる地域協力チームに託した。
 社の事業継続計画(BCP)に沿った手順で徒歩で寮を出た田中。30分後には本社にいた。BCPで、本社から50キロ圏の保守業務は発災3時間後に復旧させる―と定めている。企業との契約事項でもある。出社した社員は毎月1度行ってきた実践訓練に基づき、総出で保守業務の再開に全力を挙げた…。

 発災後の企業の動きのほんの一部を仮想ルポの形で“再現”した。ここにはBCPがBCPと呼ばれるための最重要要素が含まれている。「BCPの定義」とは何か。
 国内外のBCPを調査研究している日本政策投資銀行政策企画部の野田健太郎課長(42)は「最も簡単な表現にすると、リスクから企業を守るための『事業の優先順位を付けた経営戦略』」と説明する。漠然と「すべての事業を守る」という完全主義に固執せず、現実的視点で「必ず継続すべき事業」を何が起きても停滞させない―。そんな経営システムを構築することで、真の“強い企業”を実現することこそがBCPだと指摘する。

 静岡新聞社の調査によると、県内企業のBCP作成率は、全国に比べて高い。しかし、事業に優先順位を付ける大前提となるリスク想定をしている企業は作成済み企業の約4割にすぎない。
 野田課長は「BCPについて欧米では、1つのリスクに限定した計画ではいけない―という考え方が土台にあるが、静岡県の場合はまず、東海地震を前提とすることが現実的だろう。東海地震に備えていれば、他の災害などに適応できる部分も多い」と指摘する。その上で「明らかに静岡県内の企業の意識の高さを示した調査結果だが、東海地震のリスク想定さえしていない企業の事業継続計画が、欧米に通用するオーソドックスなBCPと言えるかどうかは若干の疑問が残る」と、不安要素を挙げた。

 静岡新聞社のアンケート調査で、県内に事業所を持つ企業が事業継続計画(BCP)の作成に高い関心を持っている現状が分かった。企業は被災後の事業停滞、地域経済の低迷をいかにして抑えるのだろうか。企業の取り組み、防災・減災に向けた国内外の動きなどを通して、BCP作成の必要性や課題を検証する。
 (この連載は、地震取材班の松本直之、加藤愛己、鈴木誠之、宮嶋尚顕が担当します)


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静岡市のオフィス街。東海地震が起きたその日、事業は

継続できるだろうか(本社ヘリ「ジェリコ1号」)



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