7月23日に伊豆市土肥新田の国道136号で地滑りが発生し、地域の幹線道路が40メートルにわたって陥没した。1カ月後、仮橋開通などで徐々ににぎわいを取り戻していく観光地。その様子を横目に、県の防災担当者たちはそれまで漠然と抱いていたイメージを目の前に突き付けられた思いが消えず、表情をこわばらせた。
「東海地震が起きれば伊豆半島から陸路が消える」―。
古い火山地帯である半島はかねてから地質のもろさを指摘され続けてきた。1994。半島の5市6町が抱える県指定の急傾斜地崩壊危険個所の総数だ。県砂防室がまとめたマップを開くと、該当個所を示す青色印が半島北部の山沿いにほぼ線状に並ぶ。“その時”が来れば、これらが一気に崩れる可能性がある。
国道136号の陥没が県の危険指定を受けていない地点だったという事実が、事態の深刻さを一層際立たせる。想定していなかった場所で土砂災害が相次いだら―。「半島の道という道が寸断される」と西川久男県災害対策室長(54)は恐れる。
県などによると、空路や海路は観光客の避難誘導に優先される。仮設住宅の整備は、新潟県中越沖地震の場合を考えても1カ月ほどかかる。山本忠雄県防災調整監(59)は、自衛隊などの支援が始まるまでの少なくとも3日間は「孤立することも前提にして備え、自分たちでしのいでほしい」と訴える。
仮に全国から民間支援の動きが起きても、被災範囲が県全域と広い東海地震は伊豆に手厚い支援が届くとは考えにくい。
伊豆市修善寺地区で防災指導員を務める元田方北消防署長の津田美智麿さん(63)は地域の会合があるたびに、水は1日1人3リットル、非常食は火を使わないものを用意しておくように―と呼び掛ける。幸い、昔ながらのコミュニティーが残る伊豆地域。「近隣住民と助け合う“共助力”は心配していない」。過去の地震や多雨災害の教訓が住民の記憶に染みついているのも強みという。
ただ、実際には若い力が足りない過疎地の人命救助や夏冬期の気候が与える避難所生活への影響など、未知数の要素を挙げればきりがないのも事実。津田さんは「有効活用できそうな手段には敏感に反応したい」と力を込めるが、その表情の裏には限界感も同時ににじんでいる。
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3月と7月、石川県の能登半島と新潟県の中越沖を震源とする大地震が相次いで発生した。過疎高齢地域の孤立支援や要援護者対策、広域支援受け入れ体制の在り方、原発防災―。東海地震にも突き付けられている課題について「9・1県総合防災訓練」を前に考える。
メモ
急傾斜地崩壊危険個所は、角度30度以上で高さ5メートル以上のがけ周辺に民家があると指定される。県内で伊豆半島のほかに指定の多い地域は、広大な山間部を持つ静岡市葵区(1029カ所)や浜松市天竜区(898カ所)など。掛川市(881カ所)、菊川市(423カ所)など平地のイメージが強い中遠地区にも目立つ。