死者11人のうち高齢者が10人を占めた新潟県中越沖地震で、最大の被害を受けた柏崎市の高齢化率は26%だった。県総合防災訓練の会場となる伊豆市の高齢化率は28%。震災で町そのものが孤立する恐れのある土肥地区に至っては36%で3人に1人が災害弱者となる。
災害時に手助けが必要な高齢者や障害者の住所などを記した「要援護者台帳」。迅速な安否確認を図る上で有効とされる。政府は全国の市町村に整備を奨励しているが、個人情報保護の観点から自治体では思うように浸透していない。
過疎化が進む柏崎市荒浜地区。台帳を基に1人の要援護者に2人の支援者があらかじめ割り当てられ、中越沖地震の際、迅速な情報収集につながった。ただ、同地区は原発を抱え、もともと防災意識が高かったという固有の事情がある。市全体を見れば自主防災組織が独自に台帳を整備していた地域は1割未満。さらに受け皿となる自主防災組織の整備が4割程度と不十分で、市防災原子力課は「隣近所のつながりが希薄な“都市部”を中心に、まずは自主防の整備を進めたい」と今後をにらむ。
伊豆市は昨年7月までに民生委員の協力で台帳を整備し、各区に配布した。しかし、希望者のみの登録としたため800人以下、人口の約2%の記載にとどまった。「実際に援助を必要とする人の半分もない」と市社会福祉課は嘆く。
「(荒浜の)支援者は要介護度まで把握していた。平常時にしっかりとコミュニティーを形成しておくことが重要」と被災地を視察した富士常葉大副学長の稲葉光彦教授(63)=福祉専門=は強調する。だが伊豆市でも中心部では隣近所の関係が希薄になりつつある。市防災課の山口雄一さん(41)は「台帳記入さえ拒否する人がいる中、日ごろからどれだけ親身になれるのか」とジレンマを口にする。
避難所の確保も不透明だ。被災1週間後も2000人以上が避難所生活を強いられた中越沖地震では、既存の老人ホームなどに高齢者を受け入れる「福祉避難所」を6カ所開設したが「十分ではなかった」(柏崎市)という。伊豆市が福祉避難所開設の契約を結ぶ施設は2カ所(8月現在)。稲葉教授が「もともとの入居者とのトラブルを避けるため事前の話し合いも必要」と指摘するように、ソフト面に目を向けた備えも求められる。
メモ
要援護者台帳は災害時要援護者を自主防災組織で把握し、事前に避難誘導の担当者を決めたり、避難所での対応を考慮したりするのに必要。要援護者は高齢者や障害者、妊婦、日本語が理解できない外国人などが挙げられる。国は昨年3月に改訂したガイドラインで、市町村が管理する要援護者の個人情報を行政内外で共有するのは、防災目的以外の流用を防ぐ対策を取った上ならば問題ないとの見解を示している。