伊豆美さんの実家の奥山家は山間部にある。やはり警戒宣言発令から間をおかず、同報無線の個別受信機が鳴り、町役場から「△□地区は山・がけ崩れの危険予想地域なので、避難してください」と広報された。
奥山家から避難地の小学校までは山道を5キロと遠い。避難は徒歩が原則だが、3年前、国は地震防災基本計画の見直しで「警戒宣言時に徒歩による避難が著しく困難な対象地区の住民について、自治体は車の活用も検討する」とした。
これを受けて、奥山さんの町は「徒歩避難が厳しい世帯は車での移動も認める」との考え方を示し、住民に説明していた。奥山さん一家の車は、緊急時の運行車両として登録済み。毛布や食料などを急いで積み込み、家を出た。
途中、500メートルほど離れた所には、独り暮らしで足があまり丈夫でないおばあさんが住んでいる。「避難地まで乗せていってあげよう」。家に寄っておばあさんを拾い上げ、無事避難地に着いた。
山間部でも、むやみに車を使っての避難は混乱を招き危険。災害弱者への対応としての利用があくまでも原則となる。現実にどう対応する方針かは、県内でも自治体によってさまざま。「役場や消防団の車を緊急車両登録してあり、この車で対象者を搬送するつもり。個人の車での避難は基本的に考えていない」「避難地へ行く前に、自主防災組織単位で一次的に集まってもらい、何台かに分乗して向かうという形を検討している」など、地域事情に応じた検討が進んでいる。