警戒宣言発令により、社会のあちこちで地震発生に備えた準備が急を告げていた。
駿河さんの叔父の浜名さんは、検査を兼ねて病院に入院中。一気に慌ただしさを増した院内の様子に何事か、と思った浜名さんは、ベッドわきのテレビで発令を知った。しばらくすると、浜名さんのベッドに担当医が来て言った。
「うちの病院は救護病院に指定されているので、地震が起きた時のけが人の受け入れ態勢をつくっておかなければなりません。比較的元気な方は取りあえず、自宅に戻っていただきたいので、協力をお願いできますか」。医師の依頼に納得した浜名さんは、急いで帰り支度を整えた。
しかし、家族と連絡を取ろうにも、既に回線が込み合っていて電話がなかなかつながらない。バスはストップし、玄関にはタクシーの姿もない。
浜名さんはまだ何とか歩いていける所に家があるが、同じように帰宅を頼まれた同室の患者は「うちは遠くてとても帰れないよ。何とか迎えに来てもらわないと」と何度も公衆電話のボタンをたたいた。
院内では院長が陣頭指揮して、医師や看護士、職員が準備に飛び回っている。既に外来診療は、救急を除いて中止された。非常口の確認や、薬品、医療器具などが地震で破損しないように対応を進めるなど、緊張感が漂った。