判定会が招集されてほぼ3時間後。通常の番組を取りやめて特別番組を流していたテレビから、緊迫度を一層増すニュースが流れた。「気象庁長官が先ほど、判定会を中座して、首相官邸に向かいました。首相に地震予知情報を報告するためとみられます」「首相が緊急閣議の招集を指示しました。間もなく、警戒宣言が出される見込みです」
程なく、画面は官房長官の会見に切り替わった。「2、3日内に駿河湾から遠州灘付近を震源とする大規模地震が発生する恐れがあるとの報告があり、大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言を発表します」と、首相発令の宣言文を緊張した表情で読み上げた。静岡など1都8県263市町村の地震防災対策強化地域は、事実上の“戒厳令”状態に入った。
駿河さんの会社は、判定会招集を受けて、業務の打ち切りを決め、駿河さんも帰宅の途に就いていた。夕方前なのにいつもより人の多い駅から電車に乗ったが、下車駅の2つ手前の駅に止まったところで車内アナウンスが流れた。「先ほど、東海地震の警戒宣言が発令されました。この電車は当駅で運行を停止します」。不安げなざわめきとともに、乗客は全員がホームへと吐き出された。
駿河さんは公衆電話で「171」をダイヤル。まず伝言を聞くと、「家族とおじいちゃん、おばあちゃんは皆家にいます」との伊豆美さんの声が聞こえてひと安心した。続いて「○△駅まで来たところで電車が止まった。急いで歩いて帰ります」と自分の伝言を吹き込んだ。そして約10キロ先の自宅へ。「地震までに帰らないと」と歩を速めた。