観測情報が発表されてから特段の変化がないまま一夜が明けた翌日の昼下がり、またテレビが臨時ニュースに切り替わった。「東海地方で表れていた地殻変動のデータの異常が数カ所に広がり、変動の量もレベルを超えたことから、気象庁は地震防災対策強化地域判定会を招集しました」。緊迫感が漂うアナウンサーの声に、伊豆美さんの緊張も高まった。
判定会での検討の結果、東海地震発生の恐れが強いと判断されれば、気象庁長官が首相に報告し、首相から「警戒宣言」が出される。今のところはまだその前の段階。アナウンサーも「落ち着いて行動し、身の周りの安全確認など、必要な準備を進めてください」と続けた。
警戒宣言が出ると、公共交通機関やデパートなどの営業が停止し、社会活動は大幅に制約されるが、判定会招集では原則として平常を維持することになっている。それでも一部で準備対応は始まり、JR東海は判定会招集報と同時に、新幹線ののぞみ、ひかりと在来線の特急の強化地域内への乗り入れをストップした。
伊豆美さんは職場の駿河さんに電話を掛けた。「警戒宣言が出る前に、必要な備えをしておいて。遠州と富士子の引き取りも頼む」と駿河さん。電話がつながりにくくなる恐れもあるため「NTTの災害用伝言ダイヤル『171』は判定会招集の時点で使えるから、大事な伝言はそちらにも吹き込むようにしよう」とアドバイスした。電話を切った伊豆美さんは、遠州君と富士子ちゃんの学校へと急いだ。