デパートや地下街など不特定多数の人がいる場所で「緊急地震速報」が出されたら、あなたはどんなことが起こると思いますか―。
「緊急地震速報の本運用開始に係る検討会」の委員を務める中森広道・日大文理学部社会学科准教授の研究室が今月実施した意識調査によれば、冒頭の問い掛けに回答者1000人余の8割強が「多くの人が、出口に殺到して大混乱が起こる」との事態を予想した。
「『密閉された空間』というような認識があるのだろう。地震は地下を通じて伝わるから、地下街は大きな影響を受けるかも―。漠とした不安を抱くのではないか」。同じく検討会委員の細渕功・八重洲地下街常務は回答の裏側にある心理をそう分析し、「そんな不安を抱える中に地震が来たら、パニックに近いことが起きないとは限らない」と付け加えた。
1日平均約15万人が行き交う東京・八重洲地下街では、昨年10月に速報システムを導入。約180のテナントが入居する地下街に、一般客には分からない表現の暗号放送が流れる体制を整えた。1年を経て、10月1日からは不特定多数に向けて明確な形で速報を発信する。報知音に続き流れるアナウンス。「間もなく地震の大きな揺れが来ます。近くの柱や壁際に寄って身の安全を守ってください」―。
デパート関係者も情報提供を求める客の声と混乱のリスクとのジレンマに悩む中で10月1日を迎える。館内放送を「各社判断」とする日本百貨店協会。ただ、従業員の対応行動などを指針にまとめ、放送を前提に一歩を踏み出した。県内の静岡伊勢丹、松坂屋静岡店なども「検討を進めている最中」と声をそろえる。
八重洲地下街の細渕さんには一昨年7月、東京で震度5強を記録した地震の後に、防災センターから聞いた地下街の様子が強く印象に残っている。「出口に殺到する行動は見られなかったという。その場で身を守ったか、あるいは動けなかったのかもしれないが」
だからこそ「適切に周知し、適切な対応行動を指示すれば、問題は起こらない」との感を強くする。デパートや地下街などの経営者、管理者に最も望む対応は「適切なアナウンスを流してほしい」(73・8%)「従業員が適切な指示をしてほしい」(68・5%)。中森研究室の調査がその見方を裏付ける。