新潟県中越沖地震が発生した7月16日午前10時10分すぎ。震源から200キロ以上離れた首都圏を走る東京急行電鉄(本社東京都)の全車両の運転席にチャイムが鳴り響いた。警告灯が点灯し、続いて音声が流れる。「地震が発生します。地震が発生します。全列車停止せよ。指示があるまで停止せよ」―。
同社が配備した緊急地震速報の受信端末は、中越沖地震の揺れが到達する46秒前に情報を受け、全8路線の電車を緊急停止させた。沿線で震度4以上が見込まれる場合、気象庁から配信された地震速報は、運輸司令所を経由して列車無線に乗り、各車両の運転士の目と耳に届く。この間に要する時間は1、2秒。
強い揺れが到達する前に地震の発生を知らせる緊急地震速報。地震のP波(縦波、初期微動)とS波(横波、主要動)の届く時間差を利用し、P波の検知で揺れの警戒を促す。
ことし4月に対応システムを導入した東急電鉄は、中越沖、その8日後の神奈川県西部での地震と2度、速報を基に電車を停止させ、活用が軌道に乗りつつある。県内ではまだ実際の活用例はないものの、静岡鉄道と伊豆箱根鉄道が既に対応設備の導入を終え、いざという時に備える。
安全対策の大幅な向上が期待できる半面、速報には精度の点で技術的な限界もある。東急電鉄の場合、2度の活用例はいずれも、想定震度4―5弱に対し、実際は震度2にとどまり、結果的には電車を止めるほどの深刻な揺れにはならなかった。
ただ、速報がもたらす秒単位の限られた猶予の中では、受け手が正誤を判断する時間はない。緊急地震速報を受信すると、事故発生時と同様のチャイムと警告灯で危険を知らせるため、運転士は迷わずブレーキに手を掛ける。
静岡鉄道鉄道部の伊藤義春業務課長は緊急地震速報を「従来の安全対策に付加する機械的なバックアップ」と位置付けた上で、「誤報が出ても構わない。旅客輸送では『間違っても安全』が大事」と活用の意義を強調した。
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緊急地震速報の一般提供が10月1日から始まる。本格的な揺れを事前に察知できる画期的な情報を、数秒から数十秒という限られた時間の中でどう生かすべきか。県外の先進事例を交え、速報の使い方と課題を探る。