全国的に策定が遅れている災害時要援護者の避難支援プラン。県内でも全体的な考え方をまとめた「全体計画」、1人1人の支援体制などを定めた「個別計画」の両方を策定したのは御前崎市と牧之原市だけにとどまっている。都市部ほど難しいと言われる避難支援プランの策定は、静岡市にとって重い課題。要援護者本人や家族の心をどう開くかは、地域の自主防災組織が鍵を握る。
要援護者とは高齢者や障害のある人、外国人、妊婦ら。プランはこのうち原則として自力で避難できない人を対象に市町が策定する。御前崎市と牧之原市以外で策定した市町は、平成19年度末時点で全体計画が3市、個別計画が1市しかない。
個人情報を他人に知られることに対し、要援護者自身や家族が抵抗感を抱くケースが多いのが実情。「災害時には助けてほしいが、名簿には載せてほしくない」という本音も漏れる。
昨年10月に県内初の全体計画を作った湖西市は年度内に個別計画も完成させたいとしていたが、頓挫した。地域福祉課は「発災後でないと要援護者リストが開封できないことに自主防の理解が得られなかった」と説明する。リストが流出して悪用される恐れもあり、担当者は慎重だ。「年内に個別計画を作りたいが、このままでは先に進まない」と要援護者と自主防の板挟みに頭を抱える。
県防災局は「プランの進ちょく状況だけでは地域の防災力は計れない」との見方を示す。20年前から整備を呼び掛けている自主防の災害時要援護者台帳(要介護者台帳)整備率は18年度調査で25%。14年度から7ポイント増えた。担当者は「避難支援の大切さが浸透しつつある。一律のプランに頼らず、自主防ごと地域事情を生かした取り組みが広がっている」と分析する。
静岡市葵区の長沼二区自主防は総合防災訓練に合わせ、隣接する県立科学技術高の生徒と防災訓練やゲームを楽しむイベントを初めて企画した。
同校の開校は今年4月。一部高齢者からは音や砂ぼこりなどを気にする声がある。自主防会長の岩崎芳和さん(48)らが「お年寄りと生徒が顔なじみになり、お互いを理解し合ってくれたら」と生徒が高齢者を避難支援する訓練を盛り込んだ。
岩崎さんは「町内に交流がなければ助け合いの精神なんて芽生えない。防災の原点は、交流ですよね」と力を込める。その思いにプラン策定のヒントが込められている。