定時を過ぎ、閑散とした静岡市清水総合事務所。その一室に、日中の仕事を終えた約三十人の建築士が集まった。住宅の耐震補強検討会。実際の施工例を全員で検証する。議論は熱を帯び、黒板に書いた家の見取り図はチョークの線で白く埋まった。
昨年暮れ、建築士会清水支部の有志で自主的に勉強会を発足させた。補強技術や知識の向上を目指し、研修を重ねている。会長の望月広道さん(53)は「自分たちにできることから始めることにした」と思いを語る。
建築士らにとって、耐震補強は必ずしも魅力の大きいビジネスではない。ある大工は「手間や時間がかかる割に利益が薄い。件数も少ない。新築をやった方がいい」と断言する。耐震補強の担い手としての「使命感」がなければ、積極的な取り組みは生まれない。
昨年十月、耐震診断から工事までを一括して請け負う目的で組織した焼津市の耐震補強推進協議会は、市内の関係者の半数にも満たない五十九人、七事業者の参加にとどまる。事務局は「もっと会員を増やしたいが、現状ではまだ様子見の人が多い」と打ち明ける。
県レベルでは昨年八月、民間の建築関係十団体が協議会を設立した。耐震補強を業界ぐるみで促進する狙いだ。しかし、動きはいまひとつ活性化してこない。山崎善利会長(64)は「団体間で取り組みに温度差がある」と連携の難しさを口にし、「本当にやる気のある人間が集まらなければ、何も進んでいかない」と強調する。
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「もうけを考えていては駄目。職人として、“痛み”を感じて取り組まないと」。建築士会静岡支部の岡山晋也さん(52)は五月、支部長就任と同時に、減災特別委員会を設置した。今秋をめどに、耐震補強の受け皿づくりを検討している。
構想では、工費をぎりぎりまで切り詰め、百万円台前半での統一を目指す。「趣旨に賛同してもらえる建築士、大工と行動したい」と、入会時の審査も想定する。
実現に向けてはまだ白紙の状態。掲げたハードルの高さは十分、自覚している。「とにかく、地震で家が壊れた後、あいつらは何をやっていたんだと、後ろ指をさされるのだけは我慢できない」。職人としてのプライドが、並々ならぬ決意を支えている。
(「東海地震は今」取材班)