窒息症状で体の末端が黒く染まった男性。生き埋めのまま火災に遭い、真っ黒焦げになった遺体。スクリーンに次々映し出された阪神・淡路大震災の犠牲者の写真の強烈さに、聴衆が息をのんだ。
十九日、住宅耐震化をテーマに袋井市中央公民館で開かれた講演会。講師の目黒公郎東大生産技術研究所助教授の声が響いた。「この人たちを救える手だてはただ一つ、耐震補強しかなかった。本当の教訓とは何か。犠牲者の声なき声を聞かなくてはいけない」
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地震の発災後、行政は避難所の生活支援や仮設住宅の建設など、手厚い援助を行うが、地震が起きたその瞬間は、だれの助けも得られない。命を守るのは自分自身。耐震化にも行政は援助策を設けてはいるが、最後は民の意識の問題だ。
東京経済大の吉井博明教授は、民の側のけん引車として建築士ら地域で活動する住宅の専門家の力に期待する。「行政の施策には限界がある。『耐震診断は常識、問題があれば補強や建て替えは当然』という雰囲気を地域でつくっていく。そういう『災害文化』を育てられるかだ」。それを担うのは、地元に根を張る専門家をおいてほかにない、と強調する。
講演会を企画した県建築士会中遠支部の塚本嘉昭支部長(56)は、自らも自治会長を務めた経験から「防災は『起きたらどうする』という話に偏りがちだが、もっと事前対策を考えることが大切。学校や公民館単位の防災活動にわれわれプロがかかわるような流れづくりを進めたらどうか」と、専門家の立場から提案する。
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講演会に足を運んだ市民もまた思いを新たにした。「今までは、地震が起きても逃げればいいくらいにしか思っていなかった。耐震化は命の問題、金がかかっても自分たちで手を付けなくてはいけない、と分かった」と掛川市の安田荘一さん(63)。浜松市の会社員藤田亜紀子さん(33)も「他人事でなく、一人ひとりができることから始めなくては」と語った。
大写しの遺体写真の前で、目黒助教授は真剣なまなざしで訴えた。「あした袋井を、静岡県を地震が襲ったら、これはあなたの姿かもしれません」(「東海地震は今」取材班)