阪神・淡路大震災から十年になる。私はその朝、ゴーッ、ガタガタという猛烈な揺れで目を覚ました。幸い我が家は家具の転倒は防ぐことが出来、支えがなかったいくつかの皿などが壊れた程度であったが、数軒先の家では瓦が落ちたり、石灯籠(とうろう)がひっくり返ったりと被害が大きかった。もっとも我が家も半年後、外壁にひびが入るなど、あの激しい揺れでガタがきてひずんでしまっていた。
私の家はむかしの加古川氾濫(はんらん)原の洲の上、宮の西という字にあり、灯籠のひっくり返った家は流れ田という字にあった。一方は砂地、他方は軟弱な泥・粘土であった。この地盤の違いは地震波の伝わり方に現れた。一方は10―数10ヘルツのガタガタという激しい揺れが直に家に伝わったが、建物の固有振動より地震波の方がはるかに短周期のため、被害は小さかった。他方、泥や粘土の軟弱地盤を通過した地震波は1―数ヘルツのグラグラという波に変換され、これが建物の固有振動に近かったので、大きな被害となった。つまり共振現象である。
私はその日のうちに神戸に入り、その日から建物の被害と地盤の関係を調べて歩いた。木造家屋や数階建ての鉄筋コンクリート造りの建物では一階が圧壊し、膝を折るように倒れていて、軟弱地盤での共振現象が原因であることがはっきりした。商船大学のある神戸市東灘区深江から芦屋市の境までの阪神高速道路が倒壊したが、これも柱が圧壊しており、典型的な共振現象であった。十階建て程度の中層鉄骨コンクリート造りの建物では、中途の階が圧壊し、つぶれた階の高さは建物によって様々であった。脚は固い岩盤まで届いており、入力波はガタガタの高周波であったと思われるが、この場合、建物最上階の天井から反射してくる波と入力波が干渉し、波高が急に大きくなったところが圧壊したと考えられた。
災害の発生という見方からすると、地震が起きたら、具体的に、ここではどのような被害が起こるかを考えることが大事であり、地震がどうして起こるかの議論は二の次である。東海地震説では地震成因論が先行し、災害発生に対する備えが遅れているような気がする。「脚下照顧」、今すぐあなたの家の地盤を見て、そこでの被害防止策を考えてほしい。(徳山明・富士常葉大学学長)
※富士常葉大防災ゼミナールは毎週月曜日の静岡新聞朝刊「週刊地震新聞」で連載中です。