地表と地下では地震の揺れはどう違うのでしょうか。地表より、地下の方が暗くて怖い、というイメージがありますね。しかも、地震が起こると、震源の深さ何キロメートルという言い方をされるため、地下に行くほど震源に近くて、揺れが大きいのではないかと考えてしまいがちです。
しかし、同じ地震でも、ビルの屋上で遭遇した人と地下街にいた人とでは、地震の感じ方に違いがあります。地下街にいた人のほうが屋上にいた人よりも揺れが少なかったと感じるのはなぜでしょう。実は、地震の揺れは地表近くの軟弱地盤や建物に伝わって増幅されるため、地表では地下の数倍も揺れが大きくなっているのです。したがって、同じ地震でも地下の方が揺れが小さいと考えることができます。
阪神・淡路大震災では、神戸の地下鉄で駅の柱が破損した一例を除いて、地下構造物にひどい被害はなかったと報告されています。さらに、数百メートル深い地下での揺れは地表とどの程度、違うのか、実際に調査されたことがあり、私もその研究に参加したことがあります。その場所は、岩手県の釜石鉱山の地下坑道です。地下七百三十メートルまでのさまざまな深さと方向に地震計を配置して、平成二年から約九年間、地震の揺れを観測しました。
平成六年十二月の三陸はるか沖地震(マグニチュード=M=7・5)では、地表は大きく揺れ、亀裂がたくさんできました。しかし、地下百二十五メートルの坑道で観測された地震の揺れは地表の二分の一弱でした。さらに、地下七百三十メートルの坑道では約三分の一でした。ちなみに、三陸はるか沖地震を含め、この九年間に三百四十四回の頻度で地震が観測されています。それでも、釜石の地下坑道は百年以上も崩れずに残っています。
宮城県沖地震(昭和五十三年六月、M7・4)の時に、釜石鉱山の地下坑道で働いていた人は、「ちょっとめまいがするなあー」と感じた程度だったそうです。同様な話を新潟県や北海道の鉱山で働いていた地質技術者たちから聞いたことがあり、地下の鉱山では揺れが少ないということは、あちこちで経験されています。このように、地下での地震の揺れは、地表の数分の一と案外小さく、揺れそのものは、それほど心配することはないようです。(湯佐泰久・環境防災学部教授)
※富士常葉大防災ゼミナールは毎週月曜日の静岡新聞朝刊「週刊地震新聞」で連載中です。