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富士常葉大 防災ゼミナール

⑤富士山の噴火災害 火山ガスの量を推定

2004/08/02
 二〇〇〇年秋から冬にかけ、富士山地下のマグマの動きと関係があるといわれる低周波地震の回数が急増した。現在、低周波地震の回数はわずかとなり、今すぐに火山噴火が起こるとは考えられない。しかし、この低周波地震の多発により、富士山が過去何度も噴火を繰り返してきた活火山であるという認識が高まってきた。このため、富士山噴火による被害状況を推定する災害予測図(ハザードマップ)を作成することになり、「富士山ハザードマップ検討委員会」(委員長・荒牧重雄東大名誉教授)が組織された。
 富士山ハザードマップ検討委員会等による詳細な調査の結果、富士山では過去に溶岩流、噴石、火山灰、火砕流等を噴出させる様々な様式の噴火が起こっていたことが明らかになった。そして噴火様式ごとの被害状況も分かってきた。例えば、西暦八六四年の貞観噴火では、山麓北西部の長尾山を火口として一・四立方キロメートルものマグマが流出し、青木ケ原樹海の基盤となる溶岩原を形成した。また、西暦一七〇七年の宝永噴火では、宝永火口から〇・七立方キロメートルの軽石や火山灰が噴出し、御殿場で二メートル以上、横浜で二〇センチメートルの厚さに降り積もった。
 このように地層として残る噴出物の量や分布については調査が進んでいるが、噴火時に大気中に拡散してしまう火山ガスについては、よく分かっていない。火山ガスには塩酸や二酸化硫黄など、人体に有害な物質が含まれるため、多量に放出すると、人間生活に大きな被害をもたらすことがある。二〇〇〇年夏の噴火以来立ち入り禁止となっている三宅島の噴火はその一例である。そこで富士常葉大学では、過去の富士山噴火の際に大気に放出された火山ガス量を推定している。
 大気に放出された火山ガス量は、メルト包有物の化学分析から予想できる。メルト包有物とは、マグマ中に漂っている鉱物に取り込まれたマグマである(図)。噴火時に多くのガス成分は蒸発するが、メルト包有物のガス成分は周囲を鉱物に囲まれているため、蒸発せずに取り残されている。従って、メルト包有物は噴火前の火山ガス量を保持している。今回、宝永噴火の際に放出された二酸化硫黄量の推定を行ったところ、三〇〇万トンという値となった。これは日本における一年間の人為的発生量の三倍にもなるため、噴火当時はガス中毒になった住民がいたかもしれない。今後、他のガス成分や他の噴火に着目したデータの算出も行い、火山ガスによる被害想定に役立てたいと考えている。
 (佐野貴司・環境防災学部助教授)

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