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アッチョンブリケな日々

ほろ苦い“タイ験”

2007/12/10
 2年前の夏に仕事でタイに行ったことがあります。バンコクみたいな都会ではなく、チェンライというど田舎でした。そこにいるある部族のロケだったのですが、そこらへんに野良牛(のらうし)やら野良鶏(のらにわとり)がいるようなのどかな場所でした。おもいっきり手作り感のある家から、ほぼ裸同然の子供たちがこっちを見て笑っていました。どうやら藤田のアフロがツボのようでした。異形な髪型に、(なんて可哀想な人なんだ)と笑っていたのでしょう。わざとやってるなんて思ってもいないんでしょう。最初に僕らは、部族の族長に挨拶しました。族長はけっこうなおじいちゃんだったのですが、とても優しい顔をしていました。「ようこそいらっしゃいました。さぁさぁどうぞどうぞ」と満面な笑顔で迎えてくれました。その笑顔には人の良さが溢れ出ていました。「昼食はぜひ私に振る舞わさせてください」。僕たちの心は躍りました。こういう人の温かさに触れるのも旅の醍醐味でした。僕たちは昼食を楽しみにしながらさっそくロケをしました。
 しかしロケ中、とんでもない光景が目に飛び込んできたのです。遠くの方で族長が棍棒を振り回しながら鬼のような形相で野良鶏を追いかけ回していたのです! 目を疑いました。あんなに優しかった族長が、です。蚊も殺せないような顔をしていた族長が、です。キリストのようなオーラを漂わせていた族長が、です。絶句でした。最終的に族長は鶏に飛びかかりとっつかまえ、棍棒で鶏をバッキバキにぶっ殺していました。
 ロケ後、昼食に出てきたテーブルいっぱいのチキン料理を、僕たちが涙ながらに食べたことは言うまでもありません。一夏のほろ苦いタイ験でした。

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「アッチョンブリケな日々」はお笑い芸人の大村朋宏さんが、静岡新聞の毎月第3月曜日夕刊の「情熱細胞」に連載しているコラムです。

◆プロフィール 大村朋宏(おおむら・ともひろ) 1998年に結成したお笑いコンビ「トータルテンボス」のボケ担当。2006年「第6回M-1グランプリ」決勝5位の実力を持つ。沼津東高出身。32歳。
◆お知らせ トータルテンボス・大村さんへのメッセージは〒422―8670 静岡新聞社編集局「情熱細胞」係まで。Eメール(jonetsu@shizushin.com)やファクス<054(286)5944>でも受け付けています。

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